Nさんの詩

11月15日 私の大切な友人Nさんが亡くなりました。
高校の同級生で小児科医のNさんは
抜群のセンスの良さと行動力で
地域医療に取り組み、多くの方に慕われた素晴らしい人でした。

生前 Nさんが書いた"おかあさんありがとう"という詩があります。
18年前に他界した私の息子を想像し書かれたものですが、
小児科医ならではの想像力で優しく語りかけてくる温かい詩です。


「お母さん ありがとう」


お母さん ありがとう
1年間 いっしょうけんめい ぼくの世話をしてくれたね
かぜをひいて 痰が増えた時なんて一晩中寝ずの看病をしてくれたね
ぼくの体をいつも清潔に ぼくの顔をいつもハンサムにしてくれたね
お母さんのおかげで ぼくはいつもかっこよくできたんだ

お母さんのおかげで 病気が重いので何日ももたないと言われたぼくが
1年間も長生きできたんだ

お母さん ありがとう
病院の先生たちの反対を押し切って
よくぼくをおうちに連れて帰ってくれたね
うれしかったよ

縁側のひだまりで 庭に遊びに来た鳥たちのさえずりが聞こえた
毎日 お兄ちゃん お姉ちゃんに頬ずりしてもらった
お父さんの車でドライブして
潮のにおいをかげたし 緑がいっぱいの山にも行けた

洗濯物を干しながら口ずさむ お母さんの子守歌が聞こえた
いつも睡眠不足のお母さんの うたた寝の寝息が ぼくの枕元で聞こえた
そう いつもそばにはお母さんの匂いがあった

お母さん お父さん お兄ちゃん お姉ちゃん ありがとう
ぼく この家に生まれて ホントにホントによかった
みんなの愛が みんなの優しさが 
ぼくを中心にして 光り輝きながら 満ちあふれていたね
みんなからぼくがもらった愛情の大きさは
きっとこの地球よりも何倍も大きいよ
ぼくの家族を ぼくは誇らしかったよ

でも お母さん
ぼくのからだはとっても疲れてきちゃった
そろそろ からだから自由になりたいんだ
おかあさんの看病がたりなかったからじゃないよ
お母さん 自分を責めないでね

お母さん そんなに悲しまないで
ぼくのすがたは消えるけど すぐそばにいつもいるから
目を閉じてぼくの名前を呼んでみて
そうすれば いつだってぼくと会えるよ
からだが自由になったぼくは
いつだってみんなのところにこれるんだよ

もうぼくの世話でくたくたになることもないよ
ぼくのためにがまんをしてくれた
お兄ちゃん お姉ちゃんの 世話もしてあげてね

ぼくがみんなといっしょにすごした1年は 生きることの素晴らしさが
パンクするほどたくさんつまった1年だったよ
ぼくは とっても幸せだよ ホントだよ

お母さん ありがとう